新しい技術や商品にすぐ飛びつく人がいる一方で、慎重な人もいます。一部の愛好家のために作った商品が、TVやSNSで拡散され、いつの間にか誰もが欲しがる商品になることもあります。
この顧客の変遷を研究したのが、スタンフォード大学教授であるベレット・M・ロジャースです。
イノベータ理論とは何か
ロジャースの「イノベータ理論」では、消費者を製品購入に対する態度で5つのタイプに分類します。
① イノベータ (革新者: 2.5%)
新しいものに興味があり、経済的にも豊か。社会的通念にとらわれず独自の判断で新技術や新ノウハウを使い始めます。
② オピニオン・リーダー(初期少数採用者 : 13.5%)
新技術に対し、主観的評価を仲間に伝え、新製品が社会に普及する素地を作り上げます。
③ アーリー・アダプター(初期多数採用者: 34.0%)
オピニオン・リーダーが新製品を使用しているのを見て、初めて採用を決心する人々です。
④ フォロワー(後期多数採用者 : 34.0%)
新しい技術やサービスの受け入れに慎重な人。初期多数採用者まで製品が普及するまで採用を見送る傾向があります。
⑤ ラガード(伝統主義者 : 16.0%)
伝統的なライフスタイルを守る人々で、判断は過去の経験に基づいています。経済的には不安定な状態に近い人々です。
ロジャースは、スピードの差はあっても、少数のイノベータが採用することから製品普及が始まるとしています。次にオピニオン・リーダーが普及を促進し、フォロワーへと波及します。この時、累積の顧客数は、縦軸に顧客数、横軸に時間を取るとS字状のカーブを描きます。
顧客が戦略の変更を迫る
企業にとってイノベータ理論が意味するところは「自社の製品やサービスを市場に導入する際の初期ターゲットは、イノベータやオピニオン・リーダーだが、成長するにしたがって、ターゲットが変わり、求めるものも違ってくる」ということです。
例えば、インターネット通販で販売を開始したAI調理器が普及するようなケースを考えてみます。最初は、ネットで新しいものを発見し、モノも見ずに注文するチャレンジャーが顧客です。その良さが分かる知識と経験を持っているので、納品すれば自分たちで何とかします。使って高評価なら、口コミで広げます。
やがて、SNS等で発信力を持った個人が目を付けて、買い、発信するようになり、それを見たアーリー・アダプターが購入を始める訳です。結果、知り合いや利用者が身の回りに表れ始めると、フォロワーが動き出します。
ですが、フォロワーになると、当初のアーリー・アダプターとは製品に求めるものが違ってきます。操作の簡単さやデザイン、価格がより重要になっている可能性があるのです。もし、初期の成功体験を守ったとしたら、開発した企業でも、脱落する可能性があります。逆に言えば、後から参入しても、先行企業の先回りをして逆転の機会をうかがうことも可能です。
自社の戦略を変える必要がある理由がここにあります。自社も変化しないと、持続的な成長はできません。